神道では心身が清浄であることを重んじます。
そのため、神社の境内には、手や口を清めるための手水舎が必ずあります。
また、コロナ禍でマスクの着用、うがい、手洗い、アルコール消毒は習慣となり、疫病に対して身体的清浄の重要性はご存じのとおりです。
一方で、不要不急の外出制限や先の見えない自粛生活に気持ちが落ち込みやすいと思います。
そんな時は、静かで開放感のある神社で夏越の大祓の茅の輪くぐりをしてみてはいかがでしょうか。
きっと自分と向き合う貴重な機会となり、悩みや不安がリセットされ、心の清浄につながります。
ー大祓とはー
大祓とは、日々の生活で知らず知らずのうちに溜まってしまった罪や穢れを祓い除き、心身を清めることで無病息災をお祈りする神社の祭典です。
大祓は年に2回行われていることが一般的で、6月の晦日と12月の晦日に執り行われています。
そして、6月の大祓を「夏越(なごし)の大祓」、12月の大祓を「年越の大祓」と呼びます。
古代から伝わる禊祓が起源とされており、特徴のひとつとして、全国の神社で茅の輪くぐりの行事が行われています。
ー大祓の起源ー
大祓は、日本最古の歴史書である古事記・日本書紀に見られる、イザナギノミコトの禊祓(みそぎはらい)を起源としています。
イザナギノミコトは黄泉の国(死後の世界)に行って穢れてしまった身体を清浄にするため、川で禊を行いました。
そして、その禊祓によって誕生したのが、神宮のご祭神である天照大御神であることは有名なお話です。
宮中においても、大宝律令で正式な年中行事に定められ、大祓が行われてきました。
中世以降は各神社でも大祓が普及し、現在では多くの神社で恒例祭典となっています。
ー罪・穢れとはー
大祓における「罪」とは、社会の秩序を乱す行為や些細な過ちを意味します。
また、「穢れ」とは、死や病気にかかることや「気枯れ」つまり、気力が衰えた状態をさします。
罪・穢れと聞くとあまりピンときませんが、些細なウソやちょっとした身勝手な行動をしたことはないでしょうか。
気持ちが落ち込んで、元気がなく、なんだかやる気が出ない状態が、「気枯れ」=「穢れ」とすると、現代を生きる私たちにも思い当たる節がありそうです。
そして、罪や穢れは、掃除しないと溜まる部屋のホコリのように、知らず知らずのうちに身体に蓄積されていくと考えられています。
そのため、神道では半年に一度、夏越の大祓と年越の大祓を通じて、身も心も清らかにリフレッシュする機会を大切にしています。
ー茅の輪くぐりとはー
茅の輪をくぐることで心身共に清浄な状態にして、健康に過ごすことができるよう罪や穢れを祓い除く行事です。
茅の輪とは、茅(ちがや)という草で編んだ輪のことで、人が通れるほどの大きな茅の輪を境内に設置しています。
茅の輪のくぐり方は一般的に、∞の字に①左回り②右回り③左回りと3回くぐり、最後に正面からくぐってお参りをします。
くぐる際には、「水無月の夏越の祓する人は千歳の命のぶというなり」と唱えます。
ー蘇民将来の説話ー
茅の輪をくぐることで健康に過ごすことができるとされているのは、「蘇民将来」の物語が由来しています。
それは、備後国(現在の広島県の東部)風土記に記されている「蘇民将来」の説話が今も語り継がれているからです。
物語の内容は、疫病を司る神様であるスサノヲノミコトが旅の途中で、一晩泊まるところがなく大変困っていました。
そんな時、蘇民将来は貧しいながらも粟で作った食事で厚くもてなしました。
その真心を喜ばれたスサノヲノミコトは、 茅の輪を腰につけている者は、疫病から免れること約束されました。
そして約束通り、疫病が流行した際に蘇民将来とその子孫は病にかかることなく、難を逃れることができたというお話です。
この説話が民間に広がり信仰されると共に、全国の神社で夏越の大祓に茅の輪くぐりが行われることになりました。
ーむすびー
大祓の本質は心の大掃除です。
「こころ」と「からだ」はとても強く結びついています。
そのため、健やかに過ごすための「からだ」は整った「こころ」からもたらされます。
しかしながら、目まぐるしく変わる環境の変化や日々の社会的ストレスにさらされ「こころ」は散らかりっぱなし。
部屋を掃除すれば清々しくなるように、散らかった「こころ」も丁寧に自分と向き合い整理していくことで、心身の清浄に繋がるのではないでしょうか。
夏越の大祓が、あなたにとって健やかに過ごす良いきっかけとなることをお祈りいたします。
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